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Project-C -地上の星座たち-/高校生の店
富士市立吉原商業高校「吉商本舗」 '07年春

登録日 07/01/14  更新日 07/05/06


富士市立吉原商業高校の「吉商本舗」は、オープン前の'04年6月末に知り、その取り組みのユニークさから、 オープン直後の'04年8月初旬にアポ無しで実際に駆けつけたことなどで、 私にとってとても印象深いお店の一つになっています。 その後も注目しブログなども時々見させていただいたり、 若園先生とは何かの拍子にはお会いしたりしながらも、長い間ご無沙汰していました。
そんな時、'07年1月13日、若園先生より、 更新の遅れていた「吉商本舗」の'05~'06年の活動報告のメールをいただき、 このページに載せさせていただいたことから、何回かのメールのやり取りがあり、 もう一度お邪魔したくなってしまったために、 '07年2月18日、お邪魔させていただきました。

今回は、期日だけ決めていたアポ有りの訪問だったのですが、 若園先生や現在は大学生の初代部長さん、現在の部長さんや部員の方、NPOの方などから、 お店を基点にし、人と人とのネットワークを広げ、地域を巻き込んださまざまな活動の様子を、 マラウィとのエイズ支援のブレスレット販売やフェアトレードの話を中心に、 白糸の滝の近くに有るお土産屋さん「茶屋の駅」に3月に出来るという「吉商本舗コーナー」の話(*1)や、 富士市ブランドとして「吉商本舗」が登録されたことなど、 興味深く伺う事が出来、そのユニークさに益々感心してしまいました。 どんなことでも、一つの事を進化させながら継続させるというのはとてもエネルギーを必要とすることだと思っていますが、 日常のフリートークの中から次々と湧き出る(生徒を動かし考えさせる)アイディアと、 それを実現させるスタッフが揃っている環境が有るというのは、 羨ましく感じました。 エイズ支援やフェアトレード活動を通して世界の情勢や経済を感じ取る事は、 生徒にとってとても良い事だと思いますし、 また、(ありがちな)学校と地域がお互いに単に便利使いしもたれ合うのではなく、 お互いに刺激し合い、どちらも一緒により良くしていこう、という活動は、 本当に素晴らしいと思います。

吉商本舗の店内。右の写真は、若園先生と初代の部長さん。 初代部長さんは現在は大学生ですが、地域活性化のイベントの企画などをされており、 この秋には吉商本舗の近くにフェアトレードのお店を始められるそうです。



吉商本舗の’05年~’06年

高校生チャレンジショップ「吉商本舗」。
毎日営業する常設店舗もすでに2年半。
さらに進化し売り上げも増えている模様です。

吉商本舗の目的 1.商業を実践で学ぶ

2005年8月26~20日、3年生4人が中国・義烏市の巨大雑貨卸売市場へ、 商品の買い付けと、 生徒と同年代の少女達が働いているアクセサリー工場を見学。 市場では、粗悪品に注意しながらキーホルダーやマグカップなど約20種類15万円相当を仕入れ。 最初は雰囲気に圧倒されていた生徒さんも 最後は電卓を片手に英語や中国語を駆使して値引き交渉をするまでになったそうです。 仕入れた商品は9月8~13日に「中国フェア」として吉商本舗で販売。

テレビ朝日「チャレンジにっぽん」で全国放送。
ノベルティグッズとし東京の自動車販売会社から大量注文受注。
2005年10月、隣のビルにコミュニティFMが開局したため店内のミニFMは閉局。
2006年からは富士地区の授産所施設などから障害者の作った製品を展示販売を開始。


吉商本舗の目的 2.地域との交流

このころからお菓子パックの注文が増え始める。 子ども会、サッカー少年団、幼稚園などなど。

出張販売も定着。 月2回お年寄りの長期療養病院へ訪問販売。 ワゴンを押して各病棟を回ります。
その他の出店。
定期では、月1回デイサービス施設、吉原商店街朝市、富士商店街朝市。
不定期では、小学校放課後学童保育(現在6校)。
クリスマスは、子ども会、ホームセンターなど。
夏休みは、子ども会、地域の夏祭り。
秋には、地域の文化祭。

'05年11月13日10時~14時30分、「まちの元気は高校生から」のスローガンのもと、 富士宮市大宮町で、富士地区の高校3校が合同で「高校生楽市」が行われました。 吉商本舗以外では、富岳館高校は野菜や苗、飲食物の出店、移動動物園と男性合唱団などのイベント、 富士宮北高校は地元商店街から仕入れた商品販売が行われました。
昨年('06年)も第2回目が行なわれました。

イベントや訪問による販売では、 生徒さんは、例えば、イベントではいらっしゃるお客様の事を考え、 児童クラブでは小学1年から6年までそれぞれの子供たちが喜べるように、 また、デイサービスや病院ではお年寄りの方々が安心して食べられるものを、と、 訪問先の要望や様子なども相談、考慮、工夫し、販売商品を検討しているそうです。
子供達やお年寄りの方々とのコミュニケーションの時間は、 最初は恥ずかしいけれど、とても楽しいそうです。


吉商本舗の目的 3.社会への貢献

「吉商本舗」が力を入れているのがフェアトレード。 2006年夏休み、若園先生が青年海外協力隊(JICA)の教師海外研修で アフリカのマラウィに行かれたことをきっかけに、 マラウィエイズ孤児支援が始まりました。 JICAの協力(商品を運んでいる)や研修時の仲間達のネットワークにより、 現地で作られた商品の販売でエイズ孤児を支援しています。 また、マラウィ商品の販売利益で「エイズ孤児支援センター」を マラウィに立てるという計画を立案、 諸団体からの寄付もあり、もうすぐ目標金額に届きます。
2006年12月の学校のベトナム訪問では吉商本舗の部員2名も参加し、 ベトナムの商品も販売を始まりました。 こちらもJICAの応援をいただいています。
「自分たちの活動で世界中の子どもたちを幸せにしたい!」 という想いが実現されていく事が生徒さんの喜びになっている、ということです。


これから

これからも、あくまでも「吉商本舗」を拠点に、全てビジネス、 上記の3つの目的に沿うものがあればどんどん取り組んで行かれる様です。 現在3代目の部長さんも、ネット販売(*2)やフェアトレードに力を入れたいと考えておられる様です。 商品開発も授業で取り組んでいますが、商品化には時間がかかる様です。



追記




多くの学校が生徒開発商品などを売り出している現状で、 若園先生の中では所謂「商業」から離れていっているのかなあ、という思いもお持ちの様ですが、 私(Ryn)的には、 商品開発は確かに今トレンドな「商業」だけれど、 「商品開発をしなければ商業ではない」訳では勿論ないし、 また、目的2の訪問販売の際の配慮は、 商品開発にも十分通じるものがあるのでは、と感じました。 吉商本舗の、常設店舗を拠点とした地元地域とのしっかりとした繋がりやグローバルな視点のフェアトレードは、 素晴らしい「商業」の取り組みだと思っています。
私はこれからも「吉商本舗」がとても楽しみです。

松下幸之助が「商売心得帖」に曰く、
「もしも、お得意先と仕入れ先のことが、絶えず気になるということがないとすれば、 商売はやらないほうがよろしい」




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